スタニスワフ・レム、それに関連すること
男は混乱しているように見える。何かに追われていて、逃げているようでもある。何か使命を果たすべく懸命に行動してるようでもある。焦ってるようで、冷静なようで、ともすれば混乱してるのは男ではなく、彼を取り巻く世界の方なのかもしれない。元宇宙飛行士の中年男性が、現在進行形で体験していることを一人称で緻密に語るミステリアスな世界、それがスタニスワフ・レムの小説「枯葉熱」だ。彼の語りを通して、読者をもその不可思議な世界に導かれる。一体彼に何が起きたのか。これから何が起きるのか?僕も読みながら迷い、戸惑い、疲弊する。本当に読むのが大変だった。でも原書はどうなのだろう?話のテンポなど、原語だったら意外と良かったりして。
スタニスワフ・レムの名前を知ったのは、学生のころ見た、タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」からだ。映画の方は、ソ連(!)のSF映画ということ、未来都市のハイウェイという設定で、東京の首都高の映像が使われていることが 当時話題となっていた。人の心を読み、その記憶の中にあるものを実体化することができる、知性を持つ惑星ソラリスの海により、調査ステーションにやってきた主人公は自殺した妻に再会し混乱してゆく。映画ではタルコフスキーによる美しい映像もあって哀愁漂うストーリーになっていた。後で原作を読んで、その映画より理知的で前向きな結末に、腰を抜かすほど驚いた。映画は映画でいいけれど、原作は原作でいい。タルコフスキーはこの原作で、なぜあの映画の脚色をしたのか、その理由が知りたい。
ソラリス、天の声、枯葉熱と読んでみて、スタニスワフ・レムは難解だけど、なんかそれだけで諦めたくない面白さがある作家だ。できることならじっくりと何度も読んでみて、読んだもの同士で集まって語り合ってみたい。そんな気持ちにすらなる。
ポーランド出身で、第2次世界大戦から冷戦の時代を生きていたせいか、作品の中にホロコーストや核兵器開発に対する批判的な姿勢が現れている。そういうところも何か真っ当でいい。
社会主義政権下の社会でSF作家でいるというのも、何かと苦労が多いと思うのだが、実際はどうだったのだろう?
読むには気合いがいるけれど、色んな意味で、この人の作品はもっと読んでみたい。そんなことを思わせる作家だ。
そういえば、惑星ソラリスはソダーバーグによってリメイクされている。こちらの方は、主人公と自殺した妻の関係性を描くことに純度を高めていて、ストーリーの背景にある精神は、さらに原作から遠いところに行ってしまった。哀愁の面は薄くなり、いささかメロドラマのようでもあるが、わかりやすいという意味でハリウッドらしい映画にはなっていると思う。ミニマム音楽を使用した映画のサントラが大変気に入って購入してしまった。
レムの翻訳本はまだまだ出版されている。頑張らないとね。
スタニスワフ・レムのサイトはここ(英語・ポーランド語) 誰か解読してくれません?
- 作者: スタニスワフレム,Stanislaw Lem,沼野充義
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こちらタルコフスキー版映画
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ソダーバーグ版ソラリスのサントラ版は輸入版しかないようです。でもこれがいいんだな・・・
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