さらに陽気な娯楽作品の読書

伊坂幸太郎陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 勉強不足でつい最近まで僕はこの作家のことは知らなかったのだが、なかなか面白いと作家と聞いて、この本を読んで見た。この本にしたのは何となくタイトルに惹かれたからだ。出勤中の通勤電車の中で読んだのだけど、テンポのよい文体と、ハイスピードのストーリー展開に引き込まれ、つい一駅乗り過ごしてしまうほどハマってしまった。自慢じゃないがこんな事は滅多に無い。
 一癖二癖ある4人組の主人公で銀行強盗で完全犯罪を目論み、後一歩というところまでいくのだが、逃走中に別の強盗団に盗んだ現金を横取りされてしまう。そこで奪い返しに動くのだが、さらなる事件に巻き込まれる、というストーリー。登場人物たちの会話のやり取りが面白い。話が本筋から脱線してまた本筋にもどる、その間合いもまたうまい。また一見バラバラな伏線的ストーリーが繋がっていくあたりも面白い。
 ただ、テンポよい文体とハイスピードのストーリーにしたことにより、書き込み足りない感じは否めない。そのせいか登場人物のキャラクターも会話など面白いことは面白いのだが、表面的で薄っぺらい感じがしてしまう。正直なところ、この主人公4人組の銀行強盗する動機がよくわからない。ずいぶん軽いノリで集結し朗らかに銀行強盗してしまう。「それがこの小説の面白いところ」と返されるのはわかっているし、自分も野暮なツッコミを入れてる自覚もあるのだが、ここまで軽妙すぎると、もうすこし書き込んで読後感のあるものにしてはいかが、と言いたくもなる。それから、この本にも出てくるのだが、オタク系犯罪何でも事情通兼便利屋キャラって最近のこの手合いのストーリーに良く出てくるような気がするだが、一体如何なる過程で使われるようになったのだろう。なんかもうあまりに都合のよい使われ方で、最近食傷気味だ。
 ともあれ、少々クレームをつけつつも、楽しませてもらったことは確か。まあこのくらいの力量がある作家なら、もっと重厚感と朗らかさを併せ持ったクライムサスペンスコメディだって書けるのではないか、なんて考えている。他の作品に期待。