とかくこの世は難しい

 今週はトレーニング強化週間。月水と筋力トレーニング、金曜日は水泳トータル1km。トレーニングの日の夕食はサプリメントプロテインのみ。真面目に体脂肪減に取り組んだ。だけど少々入れ込みすぎたようで、今日土曜日に脇腹と背中がつった状態になってしまった。まもなく45歳にしては元気なのだが、いわゆる体力増強の一線を超えるのが難しくなったように思う。こちらを鍛えれると、あちらが悲鳴を上げる。やりすぎると疲れが抜けない。かといって少しユルくすると現状維持で成長が無い。今体脂肪は17〜18%で、あと2、3%絞って体に切れを出したいのだが、週2、3回のジムのトレーニングではそれがなかなか難しいようだ。近所の薬局でたまたま特売だったので買ったフェルナビク配合の湿布薬がかなり効いている。

 これは金曜日に出来事だ。朝、職場に着いたら、同じ現場で仕事をしている女性(便宜上、以後「女A」としよう)が僕の側に来て
「Yu-goさんは○○さんと連絡取り合ったりしています?」
と何か意味ありげに尋ねた。○○さんというのは先月末でこの現場を抜けた女性(この人も以後「女B」とする)だ。僕は訝しく思いつつも女Aの問いに対して、正直に「いや、してませんよ」と答える。すると女Aは
「今だからいいますが・・・」と持ったいつけた後に、
「彼女(女B)は裏ではYu-goさんのひどい悪口を言っていたのですよ」と言って去っていった。僕はしばし茫然としてしまった。

 僕も女Aもある大手企業に出向いて仕事をしている、いわゆる出向SEだ。彼女と僕はそれぞれ別な会社から派遣されているが、現場で僕らの管理してる会社は一緒である。女Bは女Aと同じ会社で女Aの部下である。出向SEという立場は同列だが、経験年数が上ということで、女Bは僕の指示の下で仕事をしていた。
 女Bは先月いっぱいで今の現場を抜けたのだが、原因は主に女Aとの確執だ。女Aの職場恋愛の相談に女Bが率直な意見したことによる感情的対立が始まりらしい。その確執は職場の人間の多くを巻き込んでいて、僕より若手のエンジニア達の人間関係にかなり影響を及ぼしている。少なくとも女Aを良く言う人はいない。
 これは彼女達と働いたことがあるエンジニアなら誰もが認める事実なのだが、仕事については女Bが女Aより出来る。女Aは、この業界10年以上経験らしいのだが、その経験者が持つべきSE的基本がことごとく欠如している。
 女Bを外すことについての打診が管理している会社からあったので、僕はその事実をありのまま話をした。僕の話はかなりの波紋を投げかけたようだ。一説によると派遣SEという立場でありながらも女Aは管理会社の上層部、ユーザーである大手企業の幹部などと飲み会営業をしているらしい。

 その女Aの、「女Bが僕の悪口を言っていた」の告げ口を聞いた時、実はかなり薄気味悪いものを感じていた。女Bに対する怨念の深さを知ると同時に、このタイミングでそれを語るところに女Aの心の歪みを見せつけられた気がする。彼女の生きるエネルギーの源泉を垣間見たような気がしたからだ。おそらくそれは憎悪だ。僕の女Aにたいする客観的に評価とか、「この仕事は向いていない」という道理は彼女には通じない。彼女の自己愛の強さがそれを認めない。彼女がお偉いさん達と飲み会営業をしている理由は、それは彼女のプライドを満たす行為だからだ。
 これまで間違いだらけのプログラムとかテスト結果を何度となく指摘してきたが、「すみません、気をつけます」という言葉とはうらはらに、彼女は憎悪を溜め込んでいたのかもしれない。実際のところ女Bの悪口より、上層部の飲み会で語られる、女Aの僕に対する悪口のほうがよほど怖い。
 
 その日のランチは、女Aの毒抜きということで、社員食堂は使わず外食で。
 職場近くのイタリアン。この音楽がかかっていた。おいしい料理と良い音楽。
 世界はまだ美しい、と思えた。

Desafinado

Desafinado



 仕事が終わった後、職場から渋谷までの2kmを歩いている途中でパスケースを拾う。免許証やら職場のセキュリティーカードやら大事そうなものが入っていたので、交番に届けることにする。ちょっと迷いながらも最寄りの交番に着くと誰もいなくて、突然声をだした無人対応機にちょっと驚く。警察官はパトロールで外出中で誰もいなかったのだが、10分ほど待たされてやってきたのは無愛想な警察官で、マニュアル通りの対応される。僕がパスケースなんぞどこかに捨てておけば、僕は時間を失わず、このおまわりさんも暑い中移動することもなかった。正しく生きるのも結構しんどいことなのだ、と悟る。